No.30 逆向エンベロープ

 今回は、これをマスターすると音作りの幅がグンと増す「逆向エンベロープ」の使い方について話しましょう。

 通常、エンベロープ・ジェネレーター(EG)は、A(アタック)D(ディケイ)S(サスティン)R(リリース)で構成されており、図のAのような形で表されます。これら4つのボリューム操作で、いろいろな時間的変化電圧を作りますが、Bのように反転したエンベロープは、正方向のエンベロープでは決して作れない変化を発生させられます。理由としては、Aでは一度減衰したら、それ以上電圧は上がらないのですが、Bではこれが可能な点があげられるでしょう。実際、シンセサイザーではどうやってこの電圧を取り出せば良いのでしょうか。

 EGの部分にPolarity(極性)切り替えスイッチがあれば、AとBの選択ができます。もう一つは、パッチ式シンセサイザーで、直流ミキサー等に付随するInverter(インバーター=電圧極性反転器)にEGの出力を通すことで簡単に得られます。(図1)。このインバーターにKCVを通せば、キーボードの音階をさかさまにすることもできます(図2)。

 さて、反転したエンベロープの用途ですが、VCFにかけ、音色のバリエーションとする場合(図1)と、VCOにかけ、オート・ベンド効果を出す場合の2通りが一般的です。まず前者ですが、Bの図をCのようにするとわかりやすいと思います。グレーの部分が大きいほど音色が明るいわけですから、一度暗くなり、再び明るくなる音色、例えばチョンワーというような音色になります。(この場合ADSRはすべて4〜5くらい)

 Aをもっと短くしていくと、ハモンドオルガンのコツッという独特のノイズを含んだ音色に近づきます。VCFに逆向EGをかける時の注意点は、ふだんよりCOFを高めにセットすることです。

 VCOのセクションに「オート・ベンド」という機能がある場合は、実は逆向EGがVCOに入力されていることにほかなりません。ちょっと聴くとポルタメントと似た効果ですが、前にどのキーを弾いたかに左右されず、ディケイの操作でかなり効果的に幅が出せるのも利点です。

文・岩崎 工

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