今回はシンセサイザーの応用的モジュールとして比較的ポピュラーなリング・モジュレーターにつて話しましょう。 Ring Mojurator(以下RMと略す)には、2つの入力ジャックと1つの出力ジャックがあり、入力する2つの信号の周波数(例えばXとY)の和(X+Y)と差(X−Y)を同時に出力するという特殊な回路です。(図−1)例えば、倍音を全く含まないサイン波で考えると、もし入力に1000Hzと250Hzの音を入れると出力してくる信号は1250Hzと750Hzの2つ、ということになります。 これにより、自然の楽音と異なる一種の不協和音的なサウンドが出てくるのですが、普通は倍音を含んだ矩形波などを入力するので、さらにいろいろな新しい倍音が聞こえる音になります。 この時2つの入力信号の周波数をそれぞれ一定にしておけば、一定の音色になるわけですが、片方のVCOの周波数を動かすことを想像してください。図−2は、その場合の2つの出力周波数の動きを表したものです。VCO1の周波数を一定のまま、VCO2の周波数ツマミを上げていくと、実際に出てくる音は図のように変化し、倍音を多く含む波形を使っている場合「ギュルギュル」とも「キューン」ともいえるような独特の音色になります。 さて、実際にRMを使ってみると、普通のVCOでは作り得ない金属的な音が簡単にできます。というのも、本来なら100,200,300・・・という具合に倍音列が整然としているのですが、いったんRMに入力された信号は、その2つの周波数により特定の倍音が強調されたものになり、ちょうど金属をたたいた時と同じ様な状態が作り出されるからなのです。 不協和音程の多い奇数倍音や高次倍音の割合が多くなるほど音程感のあいまいな音が作れる、と覚えても良いでしょう。 金属的な音といってもお寺の鐘のようなゴーンというものから、きれいなベルツリーのシャラーンという音色もありますが、一般的にVCOでは矩形波を選び、2’(フィート)と8’というように音域をセレクトするとクリアーな音色が得られます。また、片側のVCOをLFOやADSRで変調すれば、特殊な効果音も作れるわけです。
文・岩崎 工
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