先週は、金属的な音色などを作るのに有効なリングモジュレーター(以下RMと略す)というモジュールを説明しましたが、今回は似た効果で、より音楽的に使いやすいX(クロス)モジュレーション(以下XMと略す)という機能について説明します。 RMでは、入力する2つのVCOを同時に扱い、どちらかのピッチを中心に考えることは不可能でした。従って、十分にチューニングされたVCOをキーボードで演奏しても、普通とは全く異なったピッチになってしまいます。逆に、ピッチが合うようなVCO向きのチューニングにしてしまっては、面白い効果は期待できないはずです。 さて、図−1は、XMの場合のブロック図ですが、VCO1を中心にし、VCO2は単なる変調用のモジュールとして使っていることが解るでしょう。つまり、LFOなどでFM(Frequency-Moduration)【周波数変調=ビブラート】するのと同じ感覚でVCO2を扱っているわけです。LFOと異なるのは、LFOでは30Hz以下くらいの低変調なので、単なるVCO1の音のゆれとしてしか現れませんが、耳に聞こえる音域の音で変調するので音色自体も大幅に変わってくる点です。 ライブ指向のシンセでは、ジュピター8とか、モノポリーなど最近の機種にしか装備されていませんが、もしあなたが2VCO以上のパッチ式シンセを持っているならすぐに試せます。図−1のようにVCO2の出力をVCO1のコントロール入力に入れ、ボリュームを徐々に上げてみて下さい。最初は少しひずんだような音(ディストーション)に聞こえるかもしれません。また、このツマミの位置によっては、金属的なRMのような音になるし、VCO2の音域とファイン・チューニング次第でさまざまな音色が作れるでしょう。 最近のYMOや凝ったシンセ音を使うジャパン等の音楽には欠かせない手法と言えます。図−2は、ADSRを利用し、自動的に音色(場合によっては音程も)を変えるセッティングのサンプルです。 このXMは、VCO1のコントロール入力にLFO以外の信号を入れる一例なのですが、VCOをノイズで変調し、ざわざわした音色をつくるというようなことも可能なので試してみて下さい。
文・岩崎 工
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