今週は2つのVCOのシンクロ(synchronization=同期)という機構と使い方を説明しましょう。 シンクロとは、2つのVCOの周波数を強制的に合わせる事ですから、2VCO以上のシンセでなければならないのは当然ですが、ライブ・シンセならば、そのための内部結線がされている必要があります。この機能で有名なのは、古いところでアープ社のオデッセイ、新しくはプロフィット5、ジュピター8、モノポリーなどです。 パッチ式シンセでは、大抵の場合、シンク・イン(Sync-in)シンク・アウト(Sync-out)のジャックが装備されているので問題はありません。 さて、ここで言うシンクロとは、どういう効果を生み、またなぜ必要なのでしょうか。主に2つの考え方があります。まず、2つ以上のVCOを使って音源とする場合、双方の周波数が微妙に異なる時、うなりやいわゆる混変調が起きてにごった音になってしまいます(このピッチのわずかなズレはうまく利用すれば、コーラス効果と同様のエフェクトになり、音に厚味を加えられるのですが・・・)。 この混変調は、生楽器ではあまり問題にならないのですが、シンセの場合はいかにも電気的な音として耳につきます。そこで、これを解消するためにシンクする、という考え方です。もう一つは、積極的に音色作りの手段として使うものです。 さて、図−1は周波数の近いのこぎり波をシンクロさせた場合の波形の変化です。図を見てもわかるように、周波数(音程)の違いを波形の違い(音色)へと転換してしまっていることに気付くでしょう。こうして、VCFではなかなか作れないようなユニークな波形がVCO2から出力されるわけです(図−2)。 VCO1のノーマルな出力とミックスしても良いのですが、この効果を聴きやすくするにはVCO2の出力だけをVCFに送った方が良いことになります。 図−2のカッコの中は、エンベロープをVCO2にかけて、時間的な音色変化を得るためのパッチです。2VCO間のピッチのズレによって音色は決まると言いましたが、これをEGで大幅に変えればハードな電気ギターにも負けないような音色を実現できるというわけです。
文・岩崎 工
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