No.26 VCF発振 (1)

 今回から3回かけて、アナログシンセサイザーの音作りの中でも重要な位置を占める「VCF発振」について書きます。

 普通、シンセサイザーの音源にするのはVCOやノイズですが、第三の音源として忘れられないのが、このVCFのSelf-Oscillation(自己発振)です。VCFにはレゾナンス(ピークとかリジェネレイターと呼ぶ場合もあります)というツマミがあり、音色に鼻をつまんだようなクセをつける役目をしています(14回参照)。ほとんどの機種ではこのツマミを”8”〜”10”の位置まで上げるとVCF自身が発振し(VCOを切っても)音を出します。

 図−Aは、レゾナンスを”2”から”10”の時はカット・オフ・フリケンシー(COF)で定めた周波数の音を発振し、もとの基音とか低次倍音はほとんどなくなってしまっているのがわかるでしょう。本来は、ある倍音以上(あるいは以下)を切り捨てて、音色を決定するためのCOFが、この場合は発振音のチューニングのツマミとなります。ただし、たった5センチくらいのツマミの範囲で20Hz〜20kHzも音が変わってしまうので、大変に微妙な操作が必要です。

 このVCF発振の音色ですが、おのおののフィルターにより純度は多少異なりますが、図−Bを見ても想像がつくようにサイン波になります。さらに、この音色をキーボードで音階を弾くときは、VCOの場合と同じく、キーボードCVを入力しなければなりません。このツマミは、VCFのブロック中では、KBD FOLLOWとかKCVと表示されているはずです。ツマミを”10”にしたときに通常の音階が出せるタイプが便利なのですが、ものによっては最適なポジションを捜さねばなりません。特にメモリー機能内蔵のシンセでは、目盛りの区切り方が荒いので、うまく音程がとれないこともあります。

 一つ注意したいのは、EGからの信号についてです。VCF発振のときにEGの電圧をVCFにかけると、時間的に音程が変わってしまいますから、普通の楽器音を作るときは、EGからのVCはVCFにはかけません。要するにVCFを通常のVCOのように考えればよい、ということになります。

文・岩崎 工

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