No.51 シンセサイザー最前線

 この講座も今週で最終回です。今回は現在もっとも進んでいるといわれるフェアライトCMI(Computer Musical Instrument)を中心に”これからのシンセサイザー”について話しましょう。

 最近よく話題になるデジタル・シンセサイザーの種類には、いくつかありますが、一つの主流は「サンプリング」というPCM録音の機能です。

 これはデジタル・ディレイ(第46回参照)の原理と同じく、1秒間を非常に短く区切り、音色をデジタル符号としてメモリーに記憶させるものです。これをキーボードで弾けるようにしてあるのがEミュレーターで、メモリーされた音色を8音までの和音演奏が出来ます。

 サンプリングが出来る時間は4〜5秒ですが、”ループ”といって、音をつないで繰り返す機能があるのでロングノートも可能です。

 サンプリング機能の決定版といえば、フェアライトCMIで、サンプリング音の反転や部分的な使用、合成加工などが可能です。さらに特徴的なのは、MC−4のような自動演奏装置も内蔵している点で、このデータはシステムのテレビ型モニターにディスプレイされます。また、使う音色の波形をさまざまな角度から見ることができ、視覚的な面でも使いやすくなっています。

デジタル・シンセサイザーのもう一つの分野は、倍音加算方式で、基本的な波形(サイン波、矩形波など)を倍音列に加えて合成するもの。CMIでは32倍音まで加算できます。

 こちらの点ではシンクラビアという機種の方が一歩リードしており、FM音源方式(ヤマハGS−1も採用)と組み合わせているため、非整数倍音も出せ、音の立ち上がりにリアリティーがあります。

 これはクロスモジュレーション(第24回参照)をより音楽的にプログラムしたもので、打弦楽器やブラス(金管楽器)音など、アタックに特徴のあるものに特に効果を発揮します。

 これらのコンピューター的なメモリーを使用するシンセでは、データの保存にディスケット(EPレコードのような外見)を使用し、カセット・インターフェイス(第34回参照)より容量も大きく、ロード時間も早くなっています。

文・岩崎 工

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